PENTAXユーザーなら誰しも「いつかは我が身に…」と恐れる黒死病。うちのK-50も例外なくやられました。シャッターを押しても真っ暗な写真を量産するばかり。
使ったのは、普段は風景で活躍してるSamyang 8mm F3.5の魚眼レンズ。そして、PENTAXお得意のGPSユニットO-GPS1を組み合わせて、簡易追尾での天の川撮影です。正直、天の川は真っすぐに撮りたいと思ったんですが、これが予想以上に良かったんですよ。
広角レンズで撃沈…そこで魚眼という発想
最初はね、王道で行こうと思ってたんです。手持ちのDA 17-70mm F4で、O-GPS1の簡易追尾を使って天の川を狙う。理屈的には完璧なはずでした。
ところがですよ、いざ撮ってみると「あれ?なんかおかしいぞ」と。画面の真ん中の星はちゃんと点になってるのに、周辺部の星がなんか楕円っぽく流れてる。20秒でもこれだから、もっと長くしたらもっとひどくなりそう。

調べてみたら、どうやら広角レンズの歪曲補正とO-GPS1の追尾の軌道がズレてるみたいなんです。O-GPS1は地球の自転に合わせて素直に動くんだけど、歪曲補正バリバリのデジタルレンズだと、画面の端っこで追尾の方向がずれちゃうんですね。
「じゃあ、最初から歪曲補正なんて考えてないレンズ使えばいいじゃん!」
そこで思いついたのが、Samyang 8mm F3.5の魚眼レンズでした。こいつは等距離射影方式で、歪曲なんて「仕様です」って感じのレンズ。O-GPS1との相性も悪くないはず。
魚眼レンズって星空に使えるの?実験してみた
実は前に藤の花を撮った時に、このレンズの写りの良さは知ってたんです。F3.5だから星空にも十分明るいし。でも、魚眼で星空って、正直半分お遊びみたいなもんかなって思ってました。
まず心配だったのがピント合わせ。星空撮影って無限遠のピントが命じゃないですか。このレンズはマニュアルフォーカスオンリーなんだけど、無限遠マークでバシッと星にピントが合うんです。むしろAFレンズよりも確実かも。暗い中でも迷わないし。
開放F3.5での描写も、これが思ったより良くて。中心部はもちろん、周辺部まで星がちゃんと点で写る。魚眼特有の周辺減光はあるんだけど、星空写真だとこれが逆に良い感じのビネット効果になってくれるんです。
そして何より、180度の画角で撮れる空の広さがすごい。地平線から天頂まで、本当に「空を抱いてる」みたいな感覚。これは普通の広角レンズじゃ絶対無理ですよね。
O-GPS1の使い方
O-GPS1って、Pentaxお得意の簡易天体追尾システムなんですが、使いこなすにはちょっとコツがいります。GPSで位置を把握して、地球の自転に合わせてセンサーを動かしてくれるんだけど、事前準備をサボると全然ダメ。
特にコンパスキャリブレーション、通称「コンパス回し」は絶対に手を抜いちゃダメ。最初、面倒くさがって適当にやったら、20秒でも星が流れちゃって。
正しいコンパス回しのやり方
- 三脚の水平をちゃんと出す(これ重要)
- メニューからコンパスキャリブレーションを選ぶ
- カメラを8の字に3回転させる(結構疲れる)
- 「良好」になるまで何度でもやり直す
この作業をちゃんとやった後だと、30秒でも完璧な点像が撮れるようになりました。手間はかかるけど、効果は絶大です。
今回の撮影設定
機材の組み合わせと現地の条件を考えて、こんな設定にしました:
使用機材
- カメラ:PENTAX K-50(APS-Cセンサー)
- レンズ:Samyang 8mm F3.5 UMC Fish-eye CS II
- GPS:O-GPS1(簡易追尾モードON)
- 三脚:なるべく強いやつ(風で揺れないよう重めを選択)
撮影設定
- ISO:3200(K-50の限界を考慮)
- シャッタースピード:30秒(スタック前提)
- 絞り:F3.5(開放で光量最大)
- ホワイトバランス:5000~5500K(天の川の色を重視)
- 撮影枚数:RAW+JPEG、連続240枚(後でスタック処理+タイムラプスにする)
撮影地探しが一番大変だった話
星空撮影って、撮影地選びで勝負の半分は決まっちゃいますよね。今回は都心から車で2時間半、千葉県は外房まで行きました。
事前リサーチが命
GoogleマップとStreetViewで何時間もかけて場所を探しました。条件は:
- 光害が少ない(街から20km以上離れてる)
- 南の空が開けてる(天の川を撮るため)
- 夜中でも安全にアクセスできる
- 駐車場がある(路駐は近所迷惑)
特に魚眼レンズだとかなりの広範囲が写っちゃうから、思わぬところに光源があると台無しになるんです。街灯はもちろん、自動販売機の明かりや、山の向こうの工場の照明まで、事前チェックが必要でした。
現地での構図決め
到着してから、実際に魚眼レンズで覗いてみると、予想以上に広範囲が写ることが判明。構図を決めるのに結構時間かかりました。
地面に草とか石を少し入れることで、空の広がりがより強調されることを発見。魚眼の特性を活かして、地平線を円の下の方に配置すると、まるで宇宙に吸い込まれてしまうような構図になるんです。これは新鮮でした。
現像とスタック処理、試行錯誤の連続
撮影したRAWファイルは、DxO PhotoLab 8で基本現像してから、Sequatorでスタック合成しました。
DxO PhotoLab8での現像
K-50のISO3200はそれなりにザラつくので、ノイズリダクションは一応かけて、Tiffで書き出します。あとは:
- シャドウ/ハイライト:ノータッチ
- 彩度:少し+(天の川の淡い色を出すため)
- シャープネス:控えめに(星の輪郭を保つため)
Sequatorでのスタック処理
15枚をスタック合成することで、ノイズを減らしつつ、淡い星雲も浮かび上がらせました。魚眼の歪曲があっても、Sequatorはちゃんと星の位置を認識してくれるので、問題なし。
合成後の画像を見た時は、「おお、これはすごい!」って声が出ちゃいました。まるでその場にいるような臨場感と、肉眼では見えない天の川のディテールが両立してる。魚眼ならではの作品になりました。
魚眼星景、これは面白い表現だぞ

完成した写真を見て、改めて魚眼レンズの星景写真としての可能性を感じました。
魚眼だからこその魅力
- 包まれ感がすごい:星空に包まれてるような感覚
- 地球の丸さが感じられる:地平線のカーブが宇宙的
- 前景と星空が一体になる:180度の画角で地上と天空が自然に融合
他の星景写真との差別化
普通の広角レンズだと、どうしても似たような構図になりがちじゃないですか。でも魚眼を使うと、「これまで見たことない星景写真」が撮れるんです。SNSに上げた時の反響もすごかった。
Samyang 8mm F3.5、コスパ最強説
このレンズ、定価3万円くらいなんですが、この価格でこの性能は正直驚きです。
星景撮影での良いところ
- F3.5の明るさでISO3200〜6400が実用的
- マニュアルフォーカスで無限遠のピントが確実
- 金属マウントでしっかりした作り
- 軽くてコンパクト、長時間撮影でも疲れない
ちょっと気になるところ
完璧じゃないです。周辺減光はあるし、逆光でフレアも出やすい。でも星景撮影では、あんまり関係ないことも多いんですよね。
これからの展開、魚眼星景を極めたい
今回の成功で、魚眼での星景撮影にハマっちゃいました。今後やってみたいことは:
- 四季の星座を同じ場所から撮る:季節ごとの星空の変化を記録
- 都市部での星景:光害があっても魚眼ならではの表現を探る
- タイムラプス動画:魚眼での星の動きを動画で
- 他の魚眼レンズとの比較:PENTAX純正やシグマとの違いを確認
まとめ:K-50復活で新しい世界が開けた
黒死病から復活したK-50との記念撮影で、思わぬ発見がありました。魚眼レンズっていう、ちょっと変わった選択が、星景撮影で新しい表現の扉を開いてくれたんです。
「初めて星空撮影やってみたいけど、何のレンズがいいかな?」って迷ってる人がいたら、魚眼レンズっていう選択肢も考えてみてください。きっと、今まで見たことない星空に出会えますよ。
制約を逆手に取って、独創的な作品を作る。これが写真の醍醐味だなって、改めて思いました。K-50と魚眼レンズ、そしてO-GPS1。この組み合わせでの星景撮影、まだまだ奥が深そうです。
購入を考えてる人へ
Samyang 8mm F3.5は、星景撮影の入門にもピッタリだと思います。価格も手頃だし、星以外でも風景撮影で活躍してくれます。ただし、魚眼特有の歪曲は好みが分かれるところ。まずは店頭で実際に覗いてみることをお勧めします。
星空撮影って、機材だけじゃなくて天気や月の状態、撮影地選びとか、いろんな要素が絡んでて奥が深いです。でも、だからこそ完璧な一枚が撮れた時の感動は格別。みなさんも、ぜひ夜空を見上げて、カメラを向けてみてください。きっと新しい発見がありますよ。
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